トラ車のクラッチについて考えるシリーズ2
この写真は私はフリクションプレートと呼んでいる部品です。つまり摩擦材の板です。
そしてこれとセットと成るのが、ただの鋼の板で出来たクラッチ板って呼ばれるやつです。
トラ車のクラッチは今は全て湿式多板型です。
クラッチと言うのはフリクションプレートとクラッチ板が密着してエンジンの力を駆動力として
タイヤに伝えます。またフリクションプレートとクラッチ板が微妙に滑りながらも
駆動力を伝えている時が半クラッチと呼ばれる状況ですね。
そして完全にフリクションプレートとクラッチ板が離れている時は駆動が伝わらない状態です。
これがオイルに浸った状態で行われるのが湿式で、フリクションプレートとクラッチ板が複数枚有るのが
多板型です。合わせて湿式多板型のクラッチと言う訳です。
私の得意とする産業機械等の設計で用いるクラッチは動力の伝達を切る、繋ぐ。しか考えません。
半クラッチを念頭に置いて設計はしません。最大何kgmのトルクを伝達出来るクラッチかと言う事しか
殆ど問題にしません。伝達トルク=クラッチの容量と言う考えですね。
しかし、トライアルのバイクはクラッチが命です。そして半クラッチのフィーリングの良し悪しは
ライダーの好みにもよりますし、非常に重要な機能の一つです。
では何故半クラッチって有るのかなぁ?
有り得ませんがフリクションプレートとクラッチ板の平面度がゼロで全く歪が無い。またクラッチの
プッシャープレートやバスケットと呼ばれる部品も歪ゼロで、撓んだりしない剛体で出来ていたら
ほぼ半クラッチって無く成る筈です。有るのは動摩擦から静摩擦に変わる瞬間の極めて短い時間しか
半クラッチ状態には成りません。
それではON-OFFクラッチに成って滑らかなライディングは出来ないですね。
ではどうやって適度な半クラッチを作るのか?それは適度に歪んだフリクションプレートとクラッチ板を
組み合わせる事が重要って事が解りますね。また枚数を増やすのか減らすのか?オイルはどこのを使うのか?
フリクションプレートとクラッチ板はどこのを使うのか?などその組み合わせは無限に広がりますね。
上の写真の赤い矢印で示すのはフリクション材の隙間でオイルの溜まる溝ですが、この溝の大小も
大きく影響を受けます。
先ず、湿式にする理由は摩擦熱をオイルで冷やす為です。摩擦熱で摩擦材の表面温度が上がると
フェードと言う摩擦係数が下がる現象が発生するので、油冷する事で防いでいます。多板にする事で
表面積を増やして油冷の効果を大きくしています。そして先ほどの赤い矢印の溝も大きければ油冷の
効果は大きく成りますが、フリクションプレートとクラッチ板が密着してトルクを伝達する際に密着の
妨げに成ります。つまり、フリクションプレートとクラッチ板が密着するにはオイルが退いてくれる
必要が有りますが、溝に詰まったオイルが退くのに時間がかかってしまい、半クラの時間が伸びて
しまいます。ウイリージャンプで遠くに飛びたいとか高く飛びたいのでレバーをすぱっと放しているにも関わらず、フリクションプレートとクラッチ板はパシッと繋がらない事に成ります。
特注でクラッチ板に油溝加工をするのならフリクションプレートの溝幅の広い物を試す方が部品の供給性が
良いと思います。
フリクションプレートとオイルのマッチングでフィーリングは変わって来ますから純正のクラッチで
オイルを少し流動性の低いものにするのも同じ効果が得られると思います。
逆にパシッと繋がるクラッチにしたかったら、溝は小さい程、効果は有ります。
しかし、メーカーの開発力とセッティングの能力は絶大なので、基本純正仕様が一番良いと私は思います。
新品の状態を如何に保つかに尽力して、下手に仕様変更しないでください。
例えばHRCの市販レーサー、全日本チャンプのガッチがセッティングしたものですよ。
それを下手なIBやNAが知った顔して講釈垂れても信用しない方が絶対に良いのは解りますよね。
レバー操作が軽いのに繋がりが強力なクラッチなんて有りませんからね、
それを両立したって言ってる人がいたら間違い無く嘘つきですから。
子供とか、女性ライダーで特別、力が無いとかの事情が無い限り純正仕様が一番と考えて下さい。
仕様変更はメリットも有れば必ずデメリットも出ますから、そこを理解と覚悟をして行わないと
ペテンショップの餌食にされてしまいますよ。そう考えるとオイルも純正指定が良いと思います。
何しろバイクメーカーの開発ライダーがテストした実績で選定したものですから。
他にも遜色の無いオイルとかむしろ優れているオイルが有ったとしても、きっと貴方にメーカーの
開発ライダー程、評価できるスキルは無いと思いますから。貴方がIASシングルゼッケンくらいに成れば
仕様変更してみて下さい。
先ずは新品状態を維持する事に尽力するのが一番大事な事です。
って、気にしなくて良いですよ、だって独り言だからね。未だ続きますよ。
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